
放置したむし歯や歯周病は、まず相談と状態確認から進められます
歯科への恐怖で長く放置したむし歯や歯周病でも、受診したその日に抜歯や高額な治療が決まるわけではなく、まず相談と検査から始めることができます。
前の治療でつらい思いをした方ほど、口の中を見せること自体にとても緊張するものです。この記事では、痛みが弱い日でもむし歯などが進んでいることがある理由や、予約や問診のときに怖さや希望を伝える言い方をまとめました。治療を始める前に費用や通う回数の見通しを確かめるポイントも整理したので、まずは今の状態を知る一歩の参考にしてください。
この記事の要点まとめ
- 痛みが弱くてもむし歯や歯周病が進んでいる場合があるため、検査で口の中の状態を確認できます。
- 歯科への恐怖や希望は予約時に伝え、処置を止める合図や休憩について事前に相談できます。
- 治療内容・費用・通院回数を確認し、歯を失った場合も入れ歯やブリッジを含めて検討できます。
- 放置したむし歯や歯周病は、痛みが弱い日があれば様子見でよい?
- 久しぶりの歯医者で口の中を見せたら、すぐ抜歯や治療が始まる?
- 歯医者が怖い気持ちや以前のつらい体験は、どう伝えればいい?
- 費用や通院回数の見通しは、治療を始める前に何を確かめればいい?
- よくある質問
- 参考文献
- 監修
放置したむし歯や歯周病は、痛みが弱い日があれば様子見でよい?

痛みの強さとむし歯・歯周病の進行度は一致しないことが多く、痛みが引いたからといって状態が落ち着いているとは限りません。歯周病も自覚症状が乏しいまま進みやすく、同じような口内の環境であっても進行の速さには個人差があります1。自己判断で様子を見続けるのが難しい理由と、受診を急ぎたい症状の目安を見ていきましょう。
痛みが弱まっても進行が止まったとは限らない理由
むし歯が歯の奥まで進んでいる場合、痛みが弱まる時期があっても、むし歯が治ったとは限りません。痛みが消えても細菌による感染は歯の根の先で続いており、時間が経ってから再び歯ぐきの腫れや強い痛みとして現れることが少なくありません。
また、歯周病は歯みがきのときの軽い出血や歯ぐきのむくみといった小さな変化のまま進み、気づかないうちに歯を支えるあごの骨が少しずつ減っていきます。なお、糖尿病があると体を守る力が落ちて感染しやすくなり、歯ぐきの炎症が進んで歯周病が悪くなることがあります2。そのため、歯周病は糖尿病の合併症のひとつとも考えられています2。
歯の欠け・歯ぐきの出血・口臭・片側噛みから考えられる変化
奥歯の一部が欠けている場合、表面の穴は小さく見えても、歯の内側でむし歯が広く進んでいることがあります。歯磨きのたびに出血したり、家族から口臭を指摘されたりするときは、歯と歯ぐきの間のすき間が深くなったところ(歯周ポケット)に細菌のかたまりや膿がたまり、炎症が続いているサインかもしれません。
欠けた歯や痛む場所をかばって硬いものを避け、片側ばかりで噛む習慣が続くと、使っている側の歯に負担が集中しやすくなります。奥歯がグラグラしていても自然に抜けるまで待とうと考える方もいますが、歯周病は歯を支える骨を少しずつ減らしながら進むため、待っている間も進行が止まるとは限りません。見た目や痛みの有無だけではどこまで進んでいるかを判断できないため、歯科医院の検査で内部の状態を確かめる必要があります。
顔の腫れ・発熱・膿などは予約を待たずに連絡したい症状
むし歯の細菌が歯の根の先から顎の骨や周囲の歯ぐきへと広がると、行き場を失った膿がたまり、歯ぐきがパンパンに腫れ上がることがあります。次のような症状がある場合は、通常の予約日を待たずに、早めに歯科医院や医療機関へ連絡してください。
- 頬や顎の下まで大きく腫れている
- 強い痛みとともに発熱やだるさがある
- 歯ぐきから膿が出ていて、口が開きにくい
- 唾液や食事を飲み込むときに喉の奥が痛む
このような状態のときは、まず電話で症状を伝え、当日の受診が必要かどうかを相談しましょう。
ポイント
痛みが一時的に落ち着いていても、むし歯や歯周病の進行が止まったとは限りません。見た目の欠けや出血だけでは内部の状態を判断できないため、早めに受診して検査を受けましょう。
久しぶりの歯医者で口の中を見せたら、すぐ抜歯や治療が始まる?

久しぶりに受診したからといって、説明のないままその場で抜歯や大がかりな処置が始まるわけではありません。まずは現在の口の中の状態を検査で確かめ、どのような治療の選択肢があるのか、どのくらいの期間がかかるのかを聞いてから進める流れが基本となります。
放置した歯も、まず残せる可能性を検討する
長く歯科医院から足が遠のいていると、「今さら見せたら怒られるのではないか」「すぐに抜かれるのではないか」と身構えてしまうことがあります。むし歯や歯周病が進んでいる場合でも、まずはご自身の歯をなるべく削らず、抜かずに残せる可能性がないかを検討することから始まります。
他院で抜歯が必要と告げられた場合であっても、歯の根の治療(根管治療)や歯周病の処置によって歯を残す選択肢が考えられるケースはあります。もちろんすべての歯を残せるとは限らず、周りの歯や骨を守るために抜歯が適していると判断されることもあります。それでも、放置していた期間を責めるのではなく、今の状態から何ができるかを一緒に考えていきます。
検査で状態を確認し、治療内容と期間を聞いてから考える
治療を始める前には、レントゲンや口の中の写真をとります。必要に応じて歯科用CTや口の中をスキャンする機器(iTero・トリオス)も使い、目に見えない歯の根やあごの骨のようすを調べます。モニターに映した画像を見ながら、今の状態や考えられる治療、おおよその通院の期間について説明を受け、ご自身が納得してから処置へ進むのが本来の流れです。
また、治療が一通り終わったあとも、むし歯や歯周病の再発や新たなトラブルを防ぐための定期的な通院・メンテナンスが案内されます。もし初診の当日に「今日はまず相談と検査、説明だけにしたい」「応急処置だけにとどめたい」という希望がある場合は、診察が始まる前にその旨を伝えて確認しておくと落ち着いて臨みやすくなります。
残せるかどうかの見極めと、むし歯・歯周病の治療順序の考え方
歯を残せるかどうかは、1つの症状だけで決まるものではありません。主に次のような複数の要素を組み合わせて判断されます。
- 被せ物を支えられるだけの健康な歯の質(歯質)が残っているか
- 歯の根の内部や先端まで細菌の感染がどれくらい広がっているか
- 歯周ポケットの深さや、歯を支える顎の骨の減り方がどの程度か1
むし歯と歯周病が同時に進んでいるときは、まず強い痛みや腫れ、膿をおさえる応急処置を先におこないます。そのあと、歯石を取ったり歯みがきのしかたを見直したりして、歯ぐきの治療を進めます。土台が整ってから、最後の詰め物や被せ物を作る順番で組み立てていきます。
状態によって進め方は異なるため、検査後の説明で自分の場合の順序を確かめておきましょう。
ポイント
口の中を見せたからといって、すぐに抜歯や治療が決まるわけではありません。検査で歯を残せる可能性を調べ、治療内容や期間の説明に納得してから進めることができます。
歯医者が怖い気持ちや以前のつらい体験は、どう伝えればいい?
歯の治療が怖い気持ちは、がまんして隠さなくてかまいません。予約のときや問診票で前もって伝え、手を止めてほしいときの合図を始まる前に決めておくと、自分の気持ちを示しやすくなります。大人の歯科への強い不安や怖さには、前もっての話し合いや心に働きかける方法、鎮静法などを使った対応が考えられてきました。
予約の電話や問診票で伝えておきたい3つのこと
久しぶりの受診で緊張しているときは、診療台に座ってから口頭で説明しようとすると、うまく言葉が出なくなることがあります。予約の電話やWEB予約の備考欄、当日の問診票を使って、次の3つの点をあらかじめ伝えておくとスムーズです。
1. 長く受診していなかった理由:例「以前の治療で痛いと伝えても処置が続いたことがあり、怖くて何年も通えませんでした」
2. 初診での希望:例「今日はまず口の中の状態を知りたいです。治療内容や費用を聞いてから、どう進めるか相談したいです」
3. 気になっている症状と生活上の事情:例「奥歯の欠けと出血が気になっています。パートの仕事があるため、通院のペースも相談したいです」
このように短い言葉で書き添えておくだけでも、スタッフや歯科医師が状況を把握したうえで話を聞きやすくなります。
処置中に止めてほしいときの合図は、始まる前に決めておく
「一度治療が始まったら、痛くても自分の意思で止められないのではないか」という不安を和らげるには、処置に入る前の確認が役立ちます。痛みや苦しさを感じたときに左手を挙げるなど、手を止めてほしいときの合図を担当者と事前に決めておきましょう。
また、「長い時間ずっと口を開けているのがつらいので、途中でうがいや休憩を挟んでほしい」という希望も伝えられます。「音や振動が怖いので、何をするか声をかけながら進めてほしい」といったことも、遠慮せずに始まる前に伝えておきましょう。
治療への恐怖が強いときは、麻酔の対応についても相談する
表面にぬる麻酔や細い注射針などの工夫もあります。そのうえで、怖さや緊張が強い方に向けて、麻酔科医が笑気麻酔や静脈内鎮静法をおこない、治療中の血圧や脈などの体の変化を見守る体制を整えている歯科医院もあります。処置のあとに麻酔がさめるまで休めるリカバリールームを用意している医院もあります。
笑気麻酔は鼻から笑気ガスを吸う方法で、静脈内鎮静法は点滴でお薬を入れる方法です。どちらも、治療中に不安を抱えている方の心と体の負担をやわらげるために、歯の治療と合わせて使われます3。ただし、すべての処置で使えるわけではありません。
受ける前には、持病や飲んでいる薬、アレルギー、当日の体調を確かめ、状態によっては使えないこともあります。静脈内鎮静法は自由診療で、当院では66,000円~110,000円です。この料金はインプラントなどの掲載料金とは別にかかります。
希望する場合は、受けられる条件や費用のしくみを前もって相談してください。
費用や通院回数の見通しは、治療を始める前に何を確かめればいい?
治療費や通院の期間への不安を残さないためには、処置に入る前に治療のやり方と見積りの中身を確かめ、わからない点をなくしてから進めることが大切です。保険でできる範囲や、歯を失ったときのいくつかの選び方について、前もって整理しておきたい点をまとめました。
治療を決める前に、方法と見積りへの疑問を伝える
むし歯や歯周病が複数の歯に及んでいる場合、「いくらかかるか分からないまま治療が進むのではないか」と心配になるのは自然なことです。特に費用が大きくなりやすい治療では、提示された治療方法や見積りの内容に患者さまご自身が納得してから進めることが前提となります。
他院で提示された治療方針や見積りに対して「本当にこの方法しかないのか」「自分の予算や生活に合う別の方法はないか」と疑問を感じた場合も、セカンドオピニオンを含めて相談の対象になります。支払い方法や、優先順位をつけて段階的に治療を進められるかどうかも、治療を始める前に尋ねておきましょう。
保険の範囲・通院回数・仕事の休み方について相談前にメモしておく質問
パートや仕事の予定を調整しながら通院し、家計の見通しを立てるために、初診や治療計画の説明時に次の項目をメモして尋ねてみてください。
| 確認したい項目 | 質問の具体例 |
|---|---|
| 保険診療と自由診療の区別 | 今回の治療は、どこまで公的医療保険が適用されますか?自由診療を選ぶと何が違いますか? |
| 費用の内訳と支払い時期 | 検査・根の治療・被せ物など、段階ごとにどのくらいの費用がかかりますか? |
| 通院回数と間隔の目安 | 全体の治療が終わるまでに、どのくらいの期間と回数を見込んでおけばよいですか? |
| 仕事への影響 | 抜歯や外科処置、鎮静法を使う日など、仕事を休む必要がある日はありますか? |
むし歯の深さや治療する歯の本数によって通院回数や費用は大きく変わるため、検査結果を踏まえたおおよその見通しを聞いておくと予定が立てやすくなります。
歯を失った場合も、オールオン4・6だけが選択肢ではない
もし重度のむし歯や歯周病で歯を失うことになった場合でも、最初からインプラント治療だけが決まっているわけではありません。取り外し式の入れ歯や、両隣の歯を支えにするブリッジも選択肢です。少ない本数のインプラントで入れ歯を固定するインプラントオーバーデンチャーなども含め、お口の状態や生活習慣、それぞれの治療法の長所・短所を踏まえて検討していきます。
その中の選択肢の一つである「オールオン4・6(英語ではAll-on-4などと表記されます)」は、多数の歯や全ての歯を失った方、総入れ歯のずれや着脱の手間に悩む方に向けて検討される方法です。顎の骨に4本または6本のインプラントを埋め込み、それを土台として固定式の人工歯を装着します。
1本ずつすべてインプラントで補う方法に比べると、手術する場所や費用を抑えやすい面があります。一方で、公的医療保険が使えない自由診療です。外科手術による腫れや痛み、術後のインプラント周囲炎(歯周病に似た炎症)などのリスク・副作用があり、定期的なメンテナンスも必要です。
顎の骨が足りないと言われた場合に土台づくり(骨を増やす処置)から検討できるかも含め、見た目だけでなく毎日の食事や会話のしやすさの面からも見比べて選びましょう。
オールオン4・6を検討するときは、料金に含まれる範囲も確認する
自由診療であるインプラントやオールオン4・6を検討する際は、提示された金額の総額だけでなく、「何が含まれていて、何が別途料金になるのか」という内訳を必ず確かめてください。当院の料金は、インプラントが1本330,000円~400,000円、オールオン4・6が2,500,000円、インプラントオーバーデンチャーが770,000円~1,320,000円です。いずれもインプラント体、上部構造、手術代、笑気麻酔、精密検査代を含み、静脈内鎮静法は別途66,000円~110,000円です。
このように、料金に何が含まれているか、静脈内鎮静法や骨を増やす処置などが別の料金かによって、最終的な負担は変わります。なお、この内訳の考え方は自由診療のインプラントやオールオン4・6についてのものです。一般のむし歯や歯周病の保険診療とは仕組みが異なります。
大垣市内で通院先を探している方のなかにも、「そもそも治療を受けるべきか迷っている」「まずは話だけ聞いてほしい」という段階の方は少なくありません。疑問や不安をメモにまとめ、まずは現在の状態を確かめる相談から始めてみてください。
ポイント
歯を多く失ったときでも、入れ歯やブリッジもふくめて、暮らしに合う方法を一緒に考えられます。費用については、保険が使えるところや、見積りに何がふくまれ、ほかにかかるお金があるかを、治療の前に確かめましょう。
よくある質問
Q1. 歯医者が怖いと感じるのはなぜですか?恥ずかしいことでしょうか?
過去の治療で強い痛みを感じた経験や、自分の意思で処置を止められなかった記憶、機械の音や薬品のにおいへの緊張などが重なって起こる自然な反応であり、決して珍しいことや恥ずかしいことではありません。大人の患者さまでも歯科への恐怖心から受診を控えている方は多くいらっしゃいますので、予約時や問診票で遠慮なくお伝えください。
Q2. 歯周病が気になるとき、歯磨きは1日に何回すればいいですか?
回数そのものよりも、歯と歯ぐきの境目にたまった歯垢(プラーク)を丁寧に落とせているかどうかがポイントになります。朝と寝る前を含めて1日2〜3回、たとえば朝食のあと、昼食かおやつのあと、寝る前にみがくことを目安にしましょう。寝ている間はつばがほとんど出ず、口の中の細菌が増えやすくなるため、寝る前にしっかりみがいて細菌を減らしておくことが大切です。
寝る前は、フロスや歯間ブラシも併用して丁寧に磨くことが勧められます。ただし、すでに硬くなった歯石や深い歯周ポケットの中の汚れは自宅の歯磨きだけでは落とせないため、歯科医院での専門的なクリーニングと併用してください。
Q3. 歯科の麻酔や鎮静法で、重いトラブルが起きることはないか心配です。
どんな医療行為や薬の使用にも、リスクがまったくないとは言い切れません。トラブルを防ぐため、前もって問診で持病や飲んでいる薬、アレルギーがあるかを確かめます。処置中は血圧や血液中の酸素の量などの体の変化を、モニターで見守りながら進めます。
静脈内鎮静法は、全身麻酔とは違い、ご自分で息をしながらうとうとした状態で受ける方法です。不安があるときは、担当医や麻酔科医から、リスクや見守りのしかたについて話を聞いてから決めてください。
参考文献
1. 日本臨床歯周病学会 | 歯周病は約1割が重症化!?. https://www.jacp.net/perio/severe/
2. 口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連 | 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット) | 健康日本21アクション支援システム Webサイト. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-01-006.html
3. 歯科鎮静リラックス外来|診療・外来のご案内|日本歯科大学新潟病院 歯科部門. https://www.ngt.ndu.ac.jp/hospital/dental/service/special07/index.html
4. Ashley PF, Chaudhary M, Lourenço-Matharu L. Sedation of children undergoing dental treatment. The Cochrane database of systematic reviews. 2018. PMID: 30566228 / DOI: 10.1002/14651858.CD003877.pub5
平成23年 愛知学院大学歯学部卒業
岐阜大学医学部附属病院 歯科口腔外科
杉田玄白記念公立小浜病院(福井県)
平成25年 岐阜大学大学院 医学系研究科医科学専攻 (口腔病態学分野)
平成29年 岐阜大学医学部附属病院 歯科口腔外科 助教
平成30年 吹上みなみ歯科(名古屋市)
平成30年 医学博士号取得 医博甲第一〇八九号
令和2年 杉山歯科医院
日本口腔外科学会認定 口腔外科認定医
日本再生医療学会 再生医療認定医
日本糖尿病協会登録歯科医
日本口腔科学会会員
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