
食卓で入れ歯が動くとき、まず知っておきたいこと
町内会の昼食会で、噛んだ瞬間に歯ぐきがズキッとして箸が止まる。数年前に作った部分入れ歯が最近ずれるようになった、という相談は歯科医院でよく耳にします。ずれや痛みの背景では、歯ぐき、支えの歯、入れ歯そのものの変化が重なっていることが多く、原因によって対応も変わります。この記事では、その仕組みと、受診までにできる食べ方や調理の工夫、歯科医院へ伝えるメモの作り方をまとめました。痛む入れ歯には自分で手を加えず、そのまま持参して相談することが解決への近道です。
この記事の要点まとめ
- ずれや痛みには、歯ぐき・顎の変化、支えの歯、入れ歯の摩耗や留め具が関係する場合があります。
- 受診までは食材をやわらかくし、一口を小さくして、食事量や体重の変化にも目を向けましょう。
- 入れ歯は自分で加工せず、症状をメモして現物とともに歯科医院へ相談しましょう。
目次
入れ歯が合わず食事がつらいのはなぜ?

食事中のずれや痛みは、ひとつの原因だけで起こるとは限りません。口の中と入れ歯の両方に目を向けると、状況を整理しやすくなります1。
歯ぐきや顎の形が変わり、入れ歯がカタつく
歯を失ったあとの歯ぐきや、その下の顎の骨は、年月とともに少しずつやせていくことがあります。入れ歯は作った時点の口の形に合わせてあるため、土台の形が変わると間にすき間が生まれ、噛むたびにカタつく原因になります。すき間があると噛む力が一部に集中しやすく、その部分が擦れて傷や痛みにつながる場合もあります2。数年前には合っていた入れ歯でも、口の中の変化によって合い方は変わりうると知っておくと、原因を考えやすくなります。
支えの奥歯がぐらつくと、部分入れ歯もずれやすい
部分入れ歯は、残っている歯に留め具をかけて安定させています。その支えの歯が歯周病などでぐらつくと、入れ歯全体が揺れやすくなります1。噛み合う相手の歯がない状態が続き、残った歯が伸びたように見えるケースもあり、これも噛み合わせのずれにつながります。奥歯がグラグラしていても、すぐに抜歯と決まるわけではありません。歯ぐきや骨の状態を診察で確かめたうえで、歯を残す方法も含めて検討していきます。
入れ歯のすり減りや留め具の変形でも噛みにくくなる
入れ歯の人工の歯は、毎日の食事で少しずつすり減ります。ひびが入ったり、留め具がゆるんだり変形したりすると、食事中に外れる、特定の場所に当たって痛む、といった症状が出ることがあります2。奥歯で噛みにくい状態が続くと、無意識に片側ばかりで噛む癖がつくこともあります。「顔つきが変わった気がする」と感じる方もいますが、見た目だけで原因は判断できません。入れ歯と口の中をあわせて診てもらうことが、原因を知る手掛かりになります。
受診まで、入れ歯で食事をとりやすくする工夫

予約日までの数日から数週間も、食事は毎日続きます。痛みをこらえて噛むより、食材と食べ方を少し変えるほうが口への負担を抑えられます。
硬い物や粘りの強い物を避け、食材をやわらかくする
せんべいや厚切りの肉、たくあんのような硬い物、餅やキャラメルのように粘りの強い物は、入れ歯を押し込んだり持ち上げたりしやすい食品です。受診までは無理に噛まず、調理の段階で口当たりを変えてみてください。
- 肉は薄切りやひき肉を使い、煮込んでやわらかく
- 根菜は小さめに切り、箸で崩れるくらいまで蒸すか煮る
- 汁気の少ない料理は、あんかけやとろみで飲み込みやすく
惣菜づくりに慣れた方なら、いつもの献立の切り方と加熱時間を変えるだけでも取り入れやすいはずです3。
一口を小さくし、痛む側に負担をかけない
一度にたくさん頬張ると、入れ歯が傾いたり外れたりしやすくなります。一口は小さめに、ゆっくり噛むのが基本です。痛む場所があるなら、反対側や左右の両方でそっと噛むと負担が分散されます。どの食べ方でも強く痛む場合は、その噛み方を続けないようにしましょう1。食事の途中で「どの料理で、どちらにずれたか」を覚えておくと、受診時の大切な手掛かりになります。
食べられる物が減ったら、たんぱく質と体重にも目を向ける
硬い物を避けているうちに、うどんやそうめん、煮物ばかりの献立になっていませんか。麺類が中心になると、たんぱく質が不足しやすくなります3。茶わん蒸しやスクランブルエッグ、豆腐、煮魚やほぐした焼き魚、ヨーグルトなど、やわらかく取り入れやすい食品を一品加えるだけでも献立の偏りを和らげられます。食事量が減った、体重が以前より落ちてきたと感じたら、歯科医院だけでなくかかりつけ医にも伝えておきましょう2。
痛む入れ歯を使い続ける前に確認したいこと
傷や腫れ、食べられない状態が続くときは早めに連絡する
噛むたびに同じ場所が擦れて傷ができる、歯ぐきが腫れている、出血が続く。こうした状態は、入れ歯を外して様子を見るだけでは落ち着かないこともあります1。食事や水分を十分にとれない日が続く、顔まで腫れてきた、発熱を伴うといった場合は、予約日を待たずに歯科医院へ連絡しましょう。口内炎が2週間ほどたっても治らないときも、一度診てもらう目安になります2。
自分で削る・曲げると、痛みの原因がわかりにくくなる
痛む部分をやすりで削ったり、留め具をペンチで曲げたりしたくなる気持ちは自然なものです。ただ、痛みを感じる位置と、実際に強く当たっている位置が一致しないこともあります。自己流で手を加えると合い方や噛み合わせが変わり、別の場所が当たるようになる場合があります2。割れた入れ歯を市販の接着剤で付けるのも控えてください。手を加えずそのまま持参すると、歯科医師が当たっている場所を確かめやすくなります。
入れ歯安定剤でずれを抑え続けない
入れ歯安定剤は、一時的にずれを和らげる補助として使われるものです。使う場合は製品に書かれた量と方法を守り、外したあとは入れ歯と歯ぐきに残った分を丁寧に落としましょう1。痛みや大きなずれを安定剤で覆い隠しながら使い続けると、合わなくなった原因の確認が遅れてしまいます。安定剤なしでは食事が難しいと感じるようになったら、調整や修理を相談する時期と考えてよいでしょう。
大垣市で入れ歯を相談するときの準備と受診の流れ
食べられない料理と痛む場所をメモして持参する
診察の限られた時間で伝えきれるよう、気になることをメモにまとめておくと話がスムーズに進みます。
- ずれる場面(噛んだとき、話したときなど)
- 痛む位置と、傷や口内炎の有無
- 食べにくい料理と、最近の食事量の変化
- 支えの奥歯のぐらつきや違和感
使用中の入れ歯は、装着したまま、または専用の容器に入れて忘れずに持参してください。入れ歯そのものが、診察でいちばん多くを教えてくれる資料になります1。
診察では入れ歯・歯ぐき・支えの歯を確認する
診察では、傷の位置と入れ歯の当たり方、留め具のかかり具合、噛み合わせ、支えの歯の状態を確かめます2。そのうえで、内側を整える「調整」、ひびや留め具を直す「修理」、合い方の変化が大きい場合の「作り直し」などを検討します。すぐに作り直しになるとは限らず、通院回数も口の状態や処置の内容によって変わります。 当院では、しっかりお話を伺い、内容や期間を説明して納得いただいてから治療を進める流れを大切にしています。
費用と通院の見通しを予約時から相談する
ご家族の送迎が必要な場合は、予約の際にその旨を伝え、次回以降の通院の見通しも確認しておくと予定を合わせやすくなります。大垣市では車で通院される方も多く、当院にも駐車場があります。
費用の一般的な目安は、保険診療(3割負担)でも入れ歯の調整や修理、部分入れ歯の作り直しなど、処置の内容によって異なります。一般的な費用の目安は当院の費用ではなく、実際の費用は医療機関や入れ歯の状態により異なります。 当院の費用は診察のうえでご案内します。金属床義歯やノンクラスプデンチャー、シリコーン義歯は自由診療(公的医療保険が適用されない)となり、費用が高くなるほか、種類によっては修理の方法が限られる場合もあります。伸びたように見える歯の処置や、インプラントなど他の方法の費用が気になる場合も、原因によって内容が変わるため、まずは入れ歯の診察結果を踏まえて相談すると判断しやすくなります。
よくある質問
Q1. 入れ歯がどうしても合わない場合はどうすればいいですか?
A. まずは使用中の入れ歯を持参して歯科医院で相談してください。当たっている場所の調整、留め具やひびの修理、口の形の変化が大きい場合の作り直しなど、状態に応じて方法を検討します。入れ歯以外の方法について知りたい場合も、診察で口の中を確認したうえで説明を受けると比べやすくなります。
Q2. 入れ歯で食事がしづらいのはなぜですか?
A. 歯ぐきや顎の骨がやせて入れ歯との間にすき間ができる、支えの歯がぐらつく、人工の歯がすり減る、留め具が変形するといった変化が重なることが多いためです。原因によって対応が異なるため、診察で確認することをおすすめします。
Q3. 歯科で「パコる」とはどういう意味ですか?
A. 歯科の現場で、被せ物や詰め物を外す処置を指す俗語として使われることがあります。外すときの音が由来とされる言い方で、正式な用語ではありません。気になる言葉があれば、その場で歯科医師やスタッフに意味を確認して構いません。
Q4. 保険の入れ歯はすぐに作り直せますか?
A. 現行制度では、保険診療で作った入れ歯は、原則として前回の作製から一定期間(6か月)がたたないと新しく作れないルールがあります。その間も調整や修理は相談できますので、合わないと感じたら早めに受診してください。
Q5. 支えの奥歯がグラグラしていたら抜歯になりますか?
A. ぐらつきがあっても、すぐに抜歯と決まるわけではありません。歯ぐきや骨の状態、噛み合わせを確認したうえで、歯を残す方法も含めて検討します。部分入れ歯の留め具がかかっている歯であれば、入れ歯の合い方とあわせて診てもらいましょう。
参考文献
1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(口腔・歯の健康)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/teeth
2. 公益社団法人 日本歯科医師会 https://www.jda.or.jp/
3. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
平成23年 愛知学院大学歯学部卒業
岐阜大学医学部附属病院 歯科口腔外科
杉田玄白記念公立小浜病院(福井県)
平成25年 岐阜大学大学院 医学系研究科医科学専攻 (口腔病態学分野)
平成29年 岐阜大学医学部附属病院 歯科口腔外科 助教
平成30年 吹上みなみ歯科(名古屋市)
平成30年 医学博士号取得 医博甲第一〇八九号
令和2年 杉山歯科医院
日本口腔外科学会認定 口腔外科認定医
日本再生医療学会 再生医療認定医
日本糖尿病協会登録歯科医
日本口腔科学会会員
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