
食事のたびに歯ぐきが痛む——まずは原因の見極めから
「柔らかいものばかり選んでしまう」「家族と同じ料理を囲めない」。入れ歯の痛みは、毎日の食事の楽しみに直結する悩みです。大垣市でも、数年前に作った入れ歯が合わないまま我慢を続けている方は少なくありません。痛みの裏側には、歯ぐきや顎の骨の変化、噛み合わせのズレなど複数の要因が絡み合っています。調整で対応できる段階もあれば、固定式の選択肢が候補に挙がる段階も。この記事では、痛みの原因の見分け方から固定式義歯の特徴、費用やお手入れの考え方までを順に整理します。
この記事の要点まとめ
- 入れ歯の痛みは骨や歯ぐきの変化、噛み合わせのズレなど複数要因が関わります
- 調整で対応できる場合と、固定式など別の選択肢を検討する場合があります
- 固定式治療は費用やお手入れの見通しを把握し、医療費控除の活用も検討できます
入れ歯で噛むと痛くて食事ができない主な原因

入れ歯の痛みは「そのうち慣れる」と片付けられがちですが、実際には構造的な理由が隠れている場合が少なくありません。原因を切り分けてみると、調整で対応できる範囲なのか、別の治療を考える段階なのかが見えてきます。お口の健康は全身の状態とも関わるため、我慢を長引かせないことが大切だと考えられています1。
歯ぐきや顎の骨の形状変化による適合不良
歯を失った後の顎の骨(歯槽骨)には、噛む刺激が減ることで少しずつ吸収され、痩せていく性質があります。入れ歯は歯ぐきの表面に密着して吸着力を得る装置ですから、土台となる骨の高さや幅が変われば、フィットの状態もおのずと変わってきます。作製から数年が経った入れ歯で痛みが出る背景には、この骨と粘膜の形状変化が関わっているケースが多く見られます。
裏面と粘膜の間にわずかな隙間が生まれると、噛むたびに入れ歯が動き、同じ場所がこすれて傷になりやすくなります。隙間があれば吸着力も落ちるので、食事中に浮き上がる、外れやすいといった不具合も重なりがちです。舌や頬でなんとか押さえようとして疲れる、というお困りごともここに由来すると考えられます。
噛み合わせのズレによる特定部位への過度な圧力
もうひとつの要因が、噛み合わせのバランスです。人工歯は長く使ううちに少しずつすり減り、噛む面の高さや接触の位置が変わっていきます。左右どちらかで先に当たる状態になると力が一点に集中し、その真下の歯ぐきに口内炎や潰瘍が生じやすくなることがあります。
また、痛い側をかばって反対側ばかりで噛む習慣が続けば、顎関節や周囲の筋肉に負担が偏り、顎のだるさや頭痛につながる場合もあります。咀嚼(そしゃく)力が落ちて食べられる物が限られると、栄養バランスにも影響しかねません。痛む位置が毎回同じか、それとも日によって変わるか——ここは原因を探る手がかりになります3。
今の痛みを和らげる応急対応と調整の判断基準
痛みが強いときは、粘膜への負担を減らしながら受診の準備を整える。これが現実的な対応になります。
食事がつらいときの工夫と受診までの注意点
食材は繊維を断つ方向に細かく切り、加熱して水分を含ませると、少ない力で噛みやすくなります。汁物やあんかけでまとめる調理法も飲み込みを助けてくれます。左右均等に、ゆっくり少量ずつ——これも負担の分散につながる工夫です。
痛みが強い日は、食事のときだけ入れ歯を外して粘膜を休ませる方法もあります。ただし外したまま長期間過ごすと噛み合わせが変化しやすいため、あくまで一時的な対応と考えてください。入れ歯安定剤も隙間を一時的に埋める役割にとどまり、適合そのものを整えるものではありません。長く常用すると、本来の不具合が見えにくくなることがあります。
傷が深い、腫れが引かない、発熱を伴う。こうした場合は自己判断で様子を見ず、早めにご相談ください。 市販の鎮痛薬を使う際は、持病やお薬手帳の内容を踏まえ、薬剤師や医療機関に確認しておくと納得したうえで使えます2。
歯科医院での調整で改善する目安と新製が必要なケース
新しい入れ歯を装着して間もない時期の擦れ傷は、当たっている部分をわずかに整える調整や、噛み合わせの微修正で落ち着いていくことが少なくありません。粘膜の傷が一か所に限られ、入れ歯自体のがたつきが軽い場合がこれにあたります。
一方、次のような状態では作り直しや治療方針の見直しを検討します。
- 何度調整しても数日で別の場所が痛くなる
- 入れ歯が上下左右に大きく動き、吸着力が感じられない
- 床(しょう)にひび割れがある、クラスプ(留め具)が緩んでいる
- 顎の骨の吸収が進み、土手そのものが平らに近い
当院では歯科用CTや口腔内スキャナー(iTero、トリオス)でお口の状態を把握し、モニターを使った視覚的にわかりやすい説明を心がけています。まずは現状を一緒に確認するところから始めていきましょう3。
しっかり噛みたい方のための選択肢|固定式入れ歯の特徴

調整を重ねても痛みが繰り返す場合には、支えの取り方そのものを変える方法が候補に挙がります。歯ぐきだけで支える構造から、インプラントや残っている歯を支柱に使う構造へ切り替えるという発想です2。
インプラントオーバーデンチャー(留め具付き義歯)の仕組み
インプラントオーバーデンチャーは、顎の骨に2〜4本程度のインプラントを埋入し、その上から入れ歯をホックや磁石で留める半固定式の方法です。入れ歯はご自身で取り外せるので、寝る前に外して洗浄でき、お手入れの手順は従来の入れ歯に近いまま維持できます。
入れ歯が動きにくくなると、歯ぐきの一点に力が集中しづらくなり、食事中のずれによる擦れが起こりにくい設計とされています。埋入本数を抑えられるぶん、完全固定式に比べて費用と外科的な負担を抑えやすい点も検討材料のひとつでしょう。残った歯を活用するコーヌステレスコープ義歯や、金属の留め具を使わないノンメタルクラスプデンチャーなど、お口の状況に応じた設計も選択肢に含まれます。
オールオンフォーなどの完全固定式義歯の特徴と適応
オールオンフォーは、片顎あたり4本程度のインプラントを支柱として、連結した人工歯列をネジで固定する完全固定式の方法です。ご自身では取り外さないため装置が動く感覚が少なく、天然の歯列に近い感覚で噛む動作を行いやすい構造といえます。上顎では入れ歯の床が小さくなるため、温度や味わいを感じ取りやすくなる点も特徴として挙げられます。
ただし外科処置を伴いますから、顎の骨の骨量や形態、歯周組織の状態、糖尿病など全身状態の管理が適応の判断に関わってきます。治療期間の目安は、埋入から最終的な装置の装着までおおむね3〜6か月程度を見込むケースが一般的で、骨の状態によって前後します。当院には専用オペ室とリカバリールームを備え、経験を積んだ歯科医師・歯科衛生士が体制を整えたうえで処置にあたっています。どの方法が合うかは、CT画像で骨量を確認し、生活スタイルやご希望を伺いながら一緒に検討していきます3。
固定式治療を検討する際の費用感とメンテナンスの流れ
固定式・半固定式の義歯は自由診療にあたります。そのため、費用と維持の見通しを事前に把握しておくことが、判断のうえで大きな助けになります。
自費治療の費用目安と医療費控除による負担軽減
費用は本数・骨の状態・上部構造の材料によって変わりますが、一般的な目安として、インプラントオーバーデンチャーは片顎でおおよそ80万〜150万円程度、オールオンフォーなどの完全固定式は片顎で250万〜400万円程度を示す医院が多く見られます。金額の設定は医院ごとに異なるため、検査後の見積書で内訳(診断料・埋入手術・上部構造・メンテナンス費)まで確かめておきましょう。
ぜひ知っておいていただきたいのが医療費控除です。治療の目的が咀嚼機能の回復であれば、インプラントを用いた治療費も対象になり得ます。ご家族分を合算して申告でき、通院の交通費も条件により含められます。領収書は年をまたいで保管し、確定申告時に整理しておくと手続きが進めやすくなります。分割での支払い方法を用意している医院もありますので、費用面の気がかりは初回相談の段階で遠慮なくお伝えください1。
長く機能させるための自宅ケアと歯科医院での定期健診
固定式にしたからといって、お手入れが不要になるわけではありません。インプラント周囲の粘膜は天然歯の歯周組織より炎症が広がりやすい面があり、清掃状態の維持が長持ちの鍵を握ります。歯間ブラシやスーパーフロス、タフトブラシで支柱の周囲を丁寧に清掃し、取り外せる設計であれば義歯部分の洗浄も習慣にしていきましょう。
歯科医院では3〜4か月に一度を目安に、噛み合わせのチェック、留め具やネジの緩みの確認、専門的な清掃を行います。喫煙や糖尿病といった全身的な要因は炎症の進みやすさに関わるため、医科との連携も含めて管理していきます。大垣市の当院は開院から40年以上、地域の皆さんとともに歩んできました。治療後も落ち着いて通っていただける「お口のホームドクター」として、長期的なお付き合いを大切にしています3。
よくある質問
Q1. 入れ歯が痛くて噛めないときは、どうしたらよいですか?
A. まずは無理に硬いものを噛まず、加熱して水分を含ませた食事に切り替え、粘膜への負担を軽くしてください。痛みが強い日は食事のときだけ一時的に外す方法もありますが、長期間外したままにするのは避けましょう。受診の際は、痛む場所をお伝えいただけるよう、その入れ歯を必ずご持参ください。
Q2. 歯ぐきの痛みが強くて耐えづらいときの対応は?
A. 傷が深い、腫れが引かない、発熱を伴う場合は、早めに歯科医院へご連絡ください。市販の鎮痛薬を使うときは、持病や服用中の薬との兼ね合いがありますので、薬剤師や医療機関に確認したうえでお使いください。冷たいもので患部を冷やしすぎないことも一つのポイントです。
Q3. 入れ歯の「6か月ルール」とは何ですか?
A. 保険診療で新しい入れ歯を作製した場合、原則として6か月間は同じ種類の入れ歯を保険で作り直せない、という制度上の取り決めを指します。ただしこの期間中も、調整や修理は保険で受けられます。細かな取り扱いは診療内容によって異なるため、担当の歯科医院にご確認ください。
Q4. 部分入れ歯は、食べるときだけ外してもよいですか?
A. 部分入れ歯には残った歯と歯ぐきに力を分散させる役割があるため、食事のときこそ装着しておくのが基本です。外した状態で噛み続けると、残っている歯に負担が偏る可能性があります。痛みが理由で外している場合は、調整で対応できることも多いのでご相談ください。
Q5. 顎の骨が痩せていても固定式の治療は受けられますか?
A. 骨の量や形態によって適応は異なります。CT画像で骨の状態を確かめたうえで、埋入位置や本数を工夫する方法、骨造成を併用する方法、あるいは留め具付き義歯といった別の設計を検討することもあります。診査結果をもとに、複数の選択肢をご提示します。
参考文献
1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(口腔・歯の健康)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/teeth
2. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
3. 公益社団法人 日本歯科医師会 https://www.jda.or.jp/
平成23年 愛知学院大学歯学部卒業
岐阜大学医学部附属病院 歯科口腔外科
杉田玄白記念公立小浜病院(福井県)
平成25年 岐阜大学大学院 医学系研究科医科学専攻 (口腔病態学分野)
平成29年 岐阜大学医学部附属病院 歯科口腔外科 助教
平成30年 吹上みなみ歯科(名古屋市)
平成30年 医学博士号取得 医博甲第一〇八九号
令和2年 杉山歯科医院
日本口腔外科学会認定 口腔外科認定医
日本再生医療学会 再生医療認定医
日本糖尿病協会登録歯科医
日本口腔科学会会員
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