新型コロナウイルス感染症に負けない歯と口の健康づくり
2020/07/06
新型コロナウイルス感染症に負けない歯と口の健康づくり
新型コロナウイルス感染症に負けない歯と口の健康づくり
新型コロナウイルス感染症に負けない歯と口の健康づくり
新型コロナウイルス感染症(以下、Covid-19)の緊急事態宣言の間、国民の皆さまにおかれましては、不安な日々を過ごされたと思います。幸にして最初の流行期を乗り切ることができました。感染拡大防止には3つの密(密閉・密集・密接)の回避が有効だと思われます。ここではCovid-19の発症や重症化を予防する対処方略の一つとして、歯と口の健康維持の重要性を解説したいと思います。
口腔清掃を怠ると細菌や毒性物質が上皮細胞を破壊します。これが日本人の8割が罹患している歯周病の始まりです。歯周病になると細菌や毒性物質が血管から全身に拡散します。米国の報告では、歯磨き停止試験で56%の若者がエンドトキシン血症※を発症しました。しかし、その後の口腔清掃により回復しています。別の報告では、歯周病患者は食品を噛むだけで最大で40%がエンドトキシン血症を起こしました。また、リンゴをかじるだけで血液培養で細菌が検出される病態である菌血症を発症する歯周病患者もいます。歯科疾患が原因で菌血症やエンドトキシン血症を発症している人に新型コロナウイルスが感染すると免疫暴走(サイトカインストーム)の危険性が増加します。
また、唾液1mLあたり1億個の細菌が含まれていますので、唾液の誤嚥も肺炎(誤嚥性肺炎)に関係します。Covid-19の治療では抗生物質の投与も行われますが、副作用として腸管防御力が低下するのは避けられません。そのときに唾液の細菌が腸に定着すると腸管の変調による炎症拡大を招きます。
以上をまとめると、歯と口の細菌や毒性物質は、循環器、呼吸器、消化器の3方向へ拡散し、ほぼすべての臓器に慢性炎症を起こします。平時ではそれが生活習慣病の危険因子ですが、緊急時では免疫暴走、細菌性肺炎あるいは敗血症(感染症による死亡につながる重大な臓器障害)の危険因子になります。そこで、国民の皆さまが歯と口の健康維持の重要性を理解し、菌血症とエンドトキシン血症を予防して、新型コロナウイルスの感染に備えることが大切です。
(日本歯科医師会 HP)